●プロローグ:「管理」会計の目的
こんにちは。
本日は、前回に引き続き、
管理会計に関するお話です。
今回は、前回の応用編
『管理会計実践術』 公認会計士 管理会計ラボ株式会社代表取締役 梅澤 真由美先生
2回連続で同じ先生のお話でしたが、
難しい話を非常にわかりやすく解説していただけて、
感動しました(管理会計の本は難しくて何度も挫折済みなんです…)
今回のセミナー内容に関連する本も出版されていますので、
管理会計にご興味のある方は是非ご一読ください!
企業の目的は何でしょうか?
「株主への還元」?「顧客満足」?「社会貢献」?
色々な回答があると思います。
会計的な側面からのひとつの回答は、
事業を継続していくことです。
(↑かっこよくゴーイングコンサーンと言うこともあります)
企業が継続していかなければ、
株主は投資に対するリターンが期待できません。
顧客は継続してサービスを受けることができません。
取引先や従業員の生活を支えることもできません。
企業が存続し続けること、その大前提をクリアするために
企業は利益を追求しなければなりません。
利益がなくなれば、資金が尽きて、会社は存続することができなくなります。
(実際のところは、資金さえ回っていれば企業は倒産しませんが、
利益を出せない時点で銀行や投資家からの資金調達は難しくなります)
「管理」会計は、企業の存続に必要なデータを取得する手法ですから、
常にその目的は「業績改善」にある、というのが今回のお話でした。
逆に言えば、業績改善につながらないのに
惰性で行っている「管理」会計には意味がないということですね。
●第一章:業績改善のために→細分化
会社の規模が大きく、社員が多く、なればなるほど、
会社の業績と、その中で働く個人の感覚は、ずれてきます。
「管理」会計でのキーワードの一つは「細分化」です。
働いている人たちが、
会社の目標、または現状を、
自分の事としてとらえるために、
全社のデータを、部門ごと、担当業務ごとに切り分けて
小さな単位に分割する、ということです。
どんなに大きな会社であっても、10人程度のグループに落とし込むと
自分のこととしてとらえやすくなるのでは、
というお話でした。
会社内での業績把握には、部門別管理として
この細分化の手法が使われることが多いですが、
今回のお話では、
間接部門の費用を、営業部門にあえて負担させない、という考え方が新鮮でした。
つまり、よくあるパターンの「管理」会計では、
最終的な売上を生み出す営業部門などを部門別管理のメインに考えて、
直接には売上を生み出さない総務・経理・システム・物流管理など
間接部門の業務に必要な費用は、
営業部門に、売上高などを基準として負担させ、
その結果、各営業部門の業績を算出する、という手法を使いますが、
この考え方で部門管理をした場合、
営業部門の担当者にとっては(間接部門に言いたいことはあるとしても)
そこそこ妥当な業績が把握できても、
間接部門の担当者にとっては、営業部門の業績は他人事と感じられ、
自分の事としてとらえることが難しい、という問題が生じます。
そのため、間接部門の費用は無理に売上に対応させることはせず、
間接部門の担当者たちに、会社全体ではなく
自分たちの部門の問題として取り組ませるべきという考え方です。
●第二章:業績改善のために→KPI
個人的な話ですが、
ワタクシ横文字を見ると頭がくらくらいたします…
「管理」会計にキーワードとして出てきた
KPIという言葉も、”な、なんなのさカッコつけちゃってサ、”
という気持ちでいっぱいで、とてもとっつきにくかったのですが…
KPIは、「利益向上の指標になる要素」と考えれば良いそうです。
新しい指標である必要はなく、社内で重要視されている数値などを
そのまま利用する方が、スムーズに「管理」会計を導入することができるとのことです。
何をもって、その指標とすべきかは、会社の自由です。
業種によりますが、客単価、労働時間数、歩留まり率、販売数量、販売単価等は
よくあげられる指標です。
業績の報告や、予算・予測との比較などの際に
単純に売上高、原価、人件費、利益等の数字を比べるのではなく、
社内で重要性が高いと考えられている、注目されやすい要素(つまりKPI)に
これらの金額を分解し、
その要素を使って、月ごとの変動や、目標との差額を確認することで、
経営者や各部門の担当者に理解しやすい情報を届けることができます。
●第三章:分析って結局何するの?
会計の数字は、年度が進むにつれて、
予算→予算と実績を元にした着地見込(予測)→実績へ進んでいきます。
実績は必ずしも当初の予定通りに進むわけではありません。
それ自体は当然のことですが、この場合に重要なのは、なぜ、その差異が発生したか?という分析を行い、次に生かすことです。
分析は、基本的に、同じ部門や科目ごとに、過去の数字や、予算・予測の数字と比較して、その原因を探ることで
行っていきますが、この時に覚えておくべき論点が2つあります。
1.感度分析
予測に差があり、理由が推測されたとして、その理由で説明がつくか?を確認することです。
推測される原因と異なる原因があった場合に、見逃さずに済むという利点が一番ですが、単なる計上ミスなどもこれによって確認することができます。
また、分析を行う際には、動いた項目に着目しがちですが、感度分析を行ってみると、他の関連する要素が動いているのに、逆に差が出ていない項目(つまり、この項目だけ何か起こっている)にも気づくことができます。
2.予算差異の性質
差異の性質は、2通りの観点から分析する必要があります。
1つめは、期間的な性質
一時差異(タイミングのずれが生じたことが原因の差異)なのか?
永久差異(時間が経っても解消されない差異)なのか?
一時差異があった項目は、将来の予測に変更を加える必要があります。
永久差異は、その結果将来の業績にどう影響が出るかを見極める必要があります。
2つめは、原因別
予算側に問題があるのか?実績側に問題があるのか?
予算に問題があるならば、次の予算の作成時にその問題を解消していけば良いです。
この問題に気づけたことで、より精度の高い予算を作成することができるようになります。
実績に問題があるならば、その原因に応じて次の対策を考えるべきです。
当初の目標から見て、目標を突破する数字が出ている場合はともかく、
目標を達成できていない時、その差異に向き合うのはあまり楽しい作業ではありません。
従業員の方はもちろん、経営者にとってはなおさらです。
しかし、その差異の原因を知っているのも、
適切な分析ができるのも、
誰よりも会社のことを知っているあなただからこそです。
次の一手を考えるために最も貴重な情報源である数字を、
より活かしていける会計を、一緒に作り上げていきましょう。