月別アーカイブ: 2024年12月

会社法30条(定款の認証)

条文

  • (定款の認証)
  • 第三十条 第二十六条第一項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。
  • 2 前項の公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、第三十三条第七項若しくは第九項又は第三十七条第一項若しくは第二項の規定による場合を除き、これを変更することができない。

会社法の解説

 株式会社の設立時には公証人の認証が必須です。また認証後は設立までは変更できないこととされています。
 変更できる場合は、検査役の報告を受けた裁判所が、28条(変態設立事項)につき不当と認め、変更を決定したた場合です(会社法33条7項、9項)。また発行可能株式総数についても変更が認められています(会社法37条1項、2項)

税法の解説

 特にありません。

(2024/12/26初回 令和6年5月22日 施行)

会社法29条

条文

  • 第二十九条 第二十七条各号及び前条各号に掲げる事項のほか、株式会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。

会社法の解説

 日本公証人連合会のWEBによれば下記のようなものがあります。
日本公証人連合会:Q2. 株式会社の定款の記載事項について、どのようなものがありますか。

  • (1)株式について
    • 株主名簿の基準日(会社法124条)
    • 株主名簿の名義書換手続(会社法133条、134条)
    • 株券の再発行手続(会社法228条2項)
  • (2)株主総会について
    • 定時株主総会の招集時期(会社法296条1項)
    • 株主総会の議長(会社法315条)
    • 議決権の代理行使(会社法310条)
  • (3)株主総会以外の機関について
    • 取締役(会社法326条1項、331条4項)、監査役、執行役(会社法402条1項)の員数
    • 代表取締役(会社法349条3項)、役付取締役(会長、社長、副社長、専務取締役、常務取締役等)
    • 取締役会の招集権者(会社法366条1項)
  • (4)計算について
    • 事業年度(会社法296条1項、会社計算規則59条2項)
  • (5)公告について
    • 公告の方法(会社法939条1項)

税法の解説

 法人の設立後2ヶ月以内に定款を設立届出とともに、税務署や都道府県、市区町村に提出することになります(法人税法148条1項、法人税施行規則63条)。発起人や事業年度は履歴事項全部証明書からは読み取れず、定款で確認が行われています。
 各論点はそれぞれの項目でまた。

(2024/12/26初回 令和6年5月22日 施行)

会社法28条

条文

  • 第二十八条 株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。
    • 一 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)
    • 二 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
    • 三 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
    • 四 株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

会社法の解説

 変態設立事項です。発起人が作成した当初の定款に記載する必要があるだけでなく、さらに発起人の乱用を防ぐため、裁判所が選任する検査役の調査が必要です(会社法33条)。また設立時取締役と設立時監査役によっても調査されることになります(会社法46条)。

 1号現物出資
 現物出資のことをいう。ここでいう「その価額」は調査などで不当でないか調査されます。これとは別に、会計上計算する金額(会社法445条)については、「現物出資財産の給付があった日における価額」をいう(会社計算規則43条1項2号)、とされています。
 ただし、共通支配下関係となる場合等には、「現物出資財産の当該給付をした者における当該給付の直前の帳簿価額」となります(会社計算規則43条1項2号イ、ハ)。
 定款に記載されている価額と、貸借対照表に計上される金額が異なることがあることについては注意が必要です。

 2号財産引受け
 発起人が設立後の会社のために、第三者から財産を購入する契約を結ぶことができます。これを財産引受といいます。

 3号発起人の報酬等
 発起人が会社設立の報酬をもらうためにも、定款への記載が必要です。
 設立に要した費用の額については、資本金又は資本準備金から控除することも可能です(会社計算規則43条1項3号)。ただし、通常会計上は創立費として、支出時に費用として処理するか、繰延資産として計上することになります(実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い3(3))。

 4号設立費用
 定款には設立費用については「当会社の設立費用は◯万円以内とする」等と総額を記載すればよいようです(会社法コンメンタール1 P319)。
 会社計算規則において、定款への印紙、銀行手数料、検査役報酬、登録免許税は除くものとされています(司法書士報酬は入っていないですね・・・)。

参考:会社法施行規則

  • (設立費用)
  • 第五条 法第二十八条第四号に規定する法務省令で定めるものは、次に掲げるものとする。
    • 一 定款に係る印紙税
    • 二 設立時発行株式と引換えにする金銭の払込みの取扱いをした銀行等に支払うべき手数料及び報酬
    • 三 法第三十三条第三項の規定により決定された検査役の報酬
    • 四 株式会社の設立の登記の登録免許税

参考:会社計算規則 (株式会社の設立時の株主資本)

  • 第二条 3 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
    • 三十六 共通支配下関係 二以上の者(人格のないものを含む。以下この号において同じ。)が同一の者に支配(一時的な支配を除く。以下この号において同じ。)をされている場合又は二以上の者のうちの一の者が他の全ての者を支配している場合における当該二以上の者に係る関係をいう。
  • 第四十三条 法第二十五条第一項各号に掲げる方法により株式会社を設立する場合における株式会社の設立時に行う株式の発行に係る法第四百四十五条第一項に規定する株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とは、第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号に掲げる額を減じて得た額(零未満である場合にあっては、零)とする。
    • 一 (略)
    • 二 法第三十四条第一項の規定により金銭以外の財産(以下この条において「現物出資財産」という。)の給付を受けた場合にあっては、当該現物出資財産の給付があった日における価額(次のイ又はロに掲げる場合における現物出資財産にあっては、当該イ又はロに定める額)
      • イ 当該株式会社と当該現物出資財産の給付をした者が共通支配下関係となる場合(当該現物出資財産に時価を付すべき場合を除く。)当該現物出資財産の当該給付をした者における当該給付の直前の帳簿価額
      • ロ イに掲げる場合以外の場合であって、当該給付を受けた現物出資財産の価額により資本金又は資本準備金の額として計上すべき額を計算することが適切でないときイに定める帳簿価額
    • 三 法第三十二条第一項第三号に掲げる事項として、設立に要した費用の額のうち設立に際して資本金又は資本準備金の額として計上すべき額から減ずるべき額と定めた額
  • 2~4 (略)
  • 5 第一項第二号の規定の適用については、現物出資財産について定款に定めた額と、当該現物出資財産の帳簿価額(当該出資に係る資本金及び資本準備金の額を含む。)とが同一の額でなければならないと解してはならない。

税法の解説

 本条は法人の設立前の行為について記載されています。設立前の行為は「設立中の法人」という人格のない社団によってなされ、設立後の法人に内容が引き継がれていると税法でも考えているように見受けられます。

 1号現物出資
 法人が現物出資をした場合には、法人税においてはその物の時価により譲渡したものとして計算します。また現物出資によって取得した株式の取得価額は、その時価によります(法人税法施行令119条1項3号)。ただし適格現物出資(法人税法2条1項12の14)に該当する場合には簿価により譲渡したものとされ、課税は生じません。
 個人が現物出資した場合には、所得税においてはそのものの時価ではなく、「現物出資により取得した株式」の時価を収入金額として計算することになります(タックスアンサー「No.3117 不動産を法人に現物出資したとき」)。
 消費税法においても、現物出資は資産の譲渡等とされます(消費税法施行令2条1項2号)。当該出資により取得する株式の取得の時における価額(消費税法施行令45条2項3号)により譲渡したものとして、対価の額を計算することになります。(こちらも参考:質疑応答事例「現物出資の場合の課税標準」
 この逆で現物出資は受けいれた法人は、設立後最初の課税期間において仕入税額控除を受けられることとなります(消費税基本通達9-6-1参照)。

 2号財産引受け
 特に税務上の注意点はありません。

 3号発起人の報酬等
 発起人が受ける報酬は、法人設立中の法人(人格なき社団等)からの給与所得とされています(質疑応答:会社設立発起人が受ける報酬の所得区分)。

 4号設立費用
 設立費用については、繰延資産の創立費として計上し、償却を行っていくことになります(法人税法施行令14条)。また「法人がその設立のために通常必要と認められる費用」については、本条文に従わず定款に記載していない場合でも創立費として扱うことが可能です(法人税法32条、法人税法基本通達8-1-1)。

 司法書士費用等を法人設立中に支払う場合にも設立中の法人(人格なき社団等)として、源泉徴収は必要とされるものと考えられます。法人税や消費税と異なり、源泉所得税は、設立後でよいという規定はないようですので、設立前であっても支払いの翌月10日までの納付が必要と考えられます(所得税法205条)。
 もう少しいうと、定款ができるまでは「発起人組合」として、発起人自体の源泉徴収の義務判断。定款ができた後は「設立中の法人」として源泉義務が生じるのでしょうね。

 消費税については、設立前の費用について最初の課税期間において、仕入税額控除を受けることが可能です(消費税基本通達9-6-1)。

参考:法人税法施行令

  • (繰延資産の範囲)
  • 第十四条 法第二条第二十四号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
    • 一 創立費(発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきものをいう。)

  • 第百十九条 内国法人が有価証券の取得をした場合には、その取得価額は、次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
    • 一 (略)
    • 二 金銭の払込み又は金銭以外の資産の給付により取得をした有価証券(第4号又は第20号に掲げる有価証券に該当するもの及び適格現物出資により取得をしたものを除く。) その払込みをした金銭の額及び給付をした金銭以外の資産の価額の合計額(新株予約権の行使により取得をした有価証券にあつては当該新株予約権の当該行使の直前の帳簿価額を含み、その払込み又は給付による取得のために要した費用がある場合にはその費用の額を加算した金額とする。)

(2024/12/18初回 令和6年5月22日 施行)

会社法27条(定款の記載又は記録事項)

条文

  • 第二十七条 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
    • 一 目的
    • 二 商号
    • 三 本店の所在地
    • 四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
    • 五 発起人の氏名又は名称及び住所

会社法の解説

 定款の記載事項には、絶対的記載事項、相対的記載事項及び任意的記載事項の3種類があり、本条は絶対的記載事項です。本条の事項は会社法30条1項の公証人の認証を受けるときの定款に記載されている必要があります。
 また、発行可能株式総数については、公証人の認証を受けるときには必須ではありませんが絶対的記載事項です。発行可能株式総数については、会社成立までの間に記載し変更することができます(会社法37条)。

 旧有限会社については、
株式会社の定款 =旧有限会社の定款
一 目的 =有限会社法6条1項1号の「目的」
二 商号 =有限会社法6条1項2号の「商号」
三 本店の所在地 =有限会社法6条1項7号の「本店ノ所在地」
それぞれとみなすこととされています。(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2条、5条)

 以下は各号について言及します。

 第一号:目的
 民法34条において「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」とされています。
 判例(最判昭和27年2月15日等)は取引安全の見地から目的の範囲を広く捉えてきたようですが、そもそもこの民法34条を会社法に適用するのか否か等様々な議論があるようです。
 しかしながら、2006年の会社法改正により、「類似商号に関する登記制限(商法19条,商業登記法27条)を廃止すること」とされ、曖昧な目的も許容されるようになっています。その結果定款の目的には「これに付帯する一切の事業」という記載が多くの会社に入るなど。実質的には目的外の行為について考慮する必要性が薄まっているようです。

 株主(会社法360条)、監査役(会社法385条)、監査委員(会社法407条)は取締役の目的外の行為については差し止める権利が定められています。また、取締役等が「株式会社の目的の範囲外において、投機取引のために株式会社の財産を処分したとき」には、「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」こととされています(会社法963条5項3号)。

 第二号:商号
 現在は同一商号・同一住所の場合にはその登記は許されないこととされています(商業登記法27条)。各論は第2章会社の商号(6-9条)

 第三号:本店の所在地
 会社法4条(住所)

 第四号:設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
 設立時までの最低限の出資額を記載する必要があります。つまり、出資を履行しない者がいても、最低限の出資額を満たしていれば設立を行うことができます。

 第五号:発起人の氏名又は名称及び住所
 発起人特定のため、氏名又は名称及び住所が必要です。

参考リンク:
法務省:株式会社の設立手続(発起設立)について

参考 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
第二条 (略)
2 前項の場合においては、旧有限会社の定款、社員、持分及び出資一口を、それぞれ同項の規定により存続する株式会社の定款、株主、株式及び一株とみなす。
(定款の記載等に関する経過措置)
第五条 旧有限会社の定款における旧有限会社法第六条第一項第一号、第二号及び第七号に掲げる事項の記載又は記録はそれぞれ第二条第一項の規定により存続する株式会社の定款における会社法第二十七条第一号から第三号までに掲げる事項の記載又は記録とみなし、旧有限会社の定款における旧有限会社法第六条第一項第三号から第六号までに掲げる事項の記載又は記録は第二条第一項の規定により存続する株式会社の定款に記載又は記録がないものとみなす。

参考 有限会社法
第六条 定款ニハ左ノ事項ヲ記載又ハ記録スルコトヲ要ス
 一 目的
 二 商号
 三 資本ノ総額
 四 出資一口ノ金額
 五 社員ノ氏名及住所
 六 各社員ノ出資ノ口数
 七 本店ノ所在地

税法の解説

 消費税法においては設立時の資本金の額は重要です。
 通常設立から2事業年度は、消費税の納税義務が免除されます。しかし、「事業年度開始の日における」資本金の額が1000万円以上である場合には、その事業年度については消費税の納税義務が免除されないこととなります(消費税法12条の2)。

 2023年4月以降に適用可能な「エンジェル税制-起業型」は、発起人でないと受けられない税制です(租税特別措置法37条の13の2等)。時限的な措置ですが、極稀に発起人の身分が関係する税制も存在します。

(2024/12/10初回 令和6年5月22日 施行)

会社法26条(定款の作成)

条文

  • 第二十六条 株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
  • 2 前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
  • 参考:会社法施行規則(電子署名)
  • 第二百二十五条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。
    • 一 法第二十六条第二項
    • 二~十二 (略)
  • 2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
    • 一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
    • 二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

参考:電磁的記録の方式等を定める件

会社法の解説

 この規定から、発起人は定款に「署名し、又は記名押印」したもの(1項)、あるいは、電磁的記録について「署名又は記名押印に代わる措置」をとるもの(2項)を言うことになります。

 発起人の論点については、会社法25条を参照。

税法の解説

 発起人の論点については、会社法25条を参照。

(2024/12/5初回 令和6年5月22日 施行)

会社法25条

条文

  • 第二十五条 株式会社は、次に掲げるいずれかの方法により設立することができる。
    • 一 次節から第八節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式(株式会社の設立に際して発行する株式をいう。以下同じ。)の全部を引き受ける方法
    • 二 次節、第三節、第三十九条及び第六節から第九節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法
  • 2 各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。

参考
(1項1号発起設立)
第二節 定款の作成
第三節 出資
第四節 設立時役員等の選任及び解任
第五節 設立時取締役等による調査
第六節 設立時代表取締役等の選定等
第七節 株式会社の成立
第八節 発起人等の責任等

(1項2号募集設立)
第二節 定款の作成
第三節 出資
第三十九条(設立時役員等の選任)
第六節 設立時代表取締役等の選定等
第七節 株式会社の成立
第八節 発起人等の責任等
第九節 募集による設立

会社法の解説

 会社の設立は、発起設立(1項1号)と募集設立(1項2号)があります。
 司法書士に確認したところ、発起設立が一般的な株式会社設立の方法であり、募集設立はほとんど行われない設立の方法のようです。税理士としても募集設立は実務上ほとんど見かけません。
 2006年会社法改正時には、募集設立は廃止の議論もあったようです(会社法制の現代化に関する要綱試案)。しかし「設立時に多くの出資者がいる場合には募集設立は有用であり、特に外国法人を出資者とする場合には、発起設立は必要書類(印鑑証明書に代わる署名証明書)を揃えるのに時間がかかり、発起人とすることが困難である。募集設立を存置しても考えられる弊害は小さい(日本経団連「会社法制の現代化に関する要綱試案」についての意見)」という意見もあり、最終的には募集設立は存置されています。

 発起人には資格制限は特にありません。未成年者(民法5条)、成年被後見人(民法9条)、被保佐人(民法13条)、被補助人(民法17条)などの制限能力者も、発起人になることができます。ただし、実務上は法定代理人等の同意が必要となる場合があります。また、会社も発起人になることができます。

 会社が設立前の状態については、発起人組合という状態と、設立中の会社という状態が考えられているそうです。具体的にどの行為が、どちらに帰属するのか、双方に帰属するかなどについては様々な議論があるようで、このブログでは言及を避けます。

 発起人が複数いる場合には、「会社の設立を共同して行う旨の合意が相互になされ、会社設立を目的とする民法上の組合契約(民法667条)が締結されたものと解されている(大判大正7年7月10日民録24集1480頁)。このことを踏まえて発起人組合という団体が観念され」ることなっているようです(逐条解説会社法第1巻総則・設立第1版6刷P229)。

 「設立中の会社」という概念も用いられています。「株式会社については、その設立登記前に「登記中の会社」という会社成立を目的とする「権利能力なき社団」が成立しており、成立中の会社と成立後の会社とは同一の存在であるから(同一性説)、設立中の会社のすべての関係が設立後の会社に帰属する」(会社法コンメンタール1総則・設立(1)初版第5刷P266)。

参考:
・法務省:会社法制の現代化に関する要綱試案
・日本経団連:「会社法制の現代化に関する要綱試案」についての意見)

税法の解説

 税法では、設立準備の状態は、上記「設立中の会社」という考え方を採用しているように思います。

 法人の成立前に発起人が支出した費用については、法人税法では創立費という費用として、会計上の処理を前提として損金算入を認めています(法人税法2条1項24号、法人税法32条、法人税法施行令14条1項1,2号)。

 消費税法では、設立準備費用は設立後最初の課税期間に処理することとができることとされています(消費税法基本通達9-6-1)。ただし、消費税法においては設立期間が通常に比べ長期にわたる場合や、個人事業を引き継いで設立した場合の「当該個人事業者が行った」ものについては、この限りではないものとされ、本来の課税仕入れの時期での処理となるものと思われます。
 設立期間が長期に渡る場合は、発起人単独ないし「発起人組合」や「権利なき社団」として申告することになると考えられます(三村の見解)。
 個人事業の法人成りについては、設立中の法人のものと、個人事業のものを区分することが求められることになります。

法人税法施行令
(繰延資産の範囲)
第十四条 法第二条第二十四号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
一 創立費(発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきものをいう。)
(以降略)

法人税法基本通達
(定款記載を欠く設立費用)
8-1-1 法人がその設立のために通常必要と認められる費用を支出した場合において、当該費用を当該法人の負担とすべきことがその定款等で定められていないときであっても、当該費用は令第14条第1項第1号《創立費》に規定する「法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきもの」に該当するものとする。(昭55年直法2-8「二十八」により追加、平19年課法2-17「十六」により改正)

消費税法基本通達
(法人の設立期間中の資産の譲渡等及び課税仕入れの帰属)
9-6-1 法人の設立期間中に当該設立中の法人が行った資産の譲渡等及び課税仕入れは、当該法人のその設立後最初の課税期間における資産の譲渡等及び課税仕入れとすることができるものとする。ただし、設立期間がその設立に通常要する期間を超えて長期にわたる場合における当該設立期間中の資産の譲渡等及び課税仕入れ又は当該法人が個人事業を引継いで設立されたものである場合における当該個人事業者が行った資産の譲渡等及び課税仕入れについては、この限りでない。
(注) 本文の取扱いによる場合であっても、当該法人の設立後最初の課税期間の開始の日は、当該法人の設立の日となるのであるから留意する。

(2024/12/4初回 令和6年5月22日 施行)